日本の国民病といもいわれる「がん」。医学の進歩とともに、決して不治の病ではありませんが、それでもがん治療の現実やそれに伴うお金のことなど知らなくてはならないことが多くあります。
「がん」と「お金」のスペシャリストをお招きして、知らないと後悔する、がんとお金の話をしていただきました。
近藤正樹(お金の小学校校長)
早稲田大学社会科学部卒業後、舞台俳優の道へ。その後、外資系金融機関で働き、MDRT会員資格を取得。
2017年より株式会社リスクマネジメント・ラボラトリーに所属、日本では数少ないIFA(独立系フィナンシャルアドバイザー)として活動する。
中村 健二(一般社団法人温熱療法協会代表理事、がんサポートDr.代表)
慶応大学医学部卒業。米国イエール大学医学部大学院で公衆衛生博士号、慶応大学で医学博士号を取得。
厚生労働省で障害者施設や医療保険制度に関わる。がん治療への造詣が深く、一般社団法人温熱療法協会代表理険制度に関わる。がん治療への造詣が深く、一般社団法人温熱療法協会代表理事、がんサポートDr.代表を兼任。
がんの捉え方
中村健二先生(以下、中村):がんの人達は、みんな耳にする話なんだけど、がんは砂糖が好きだと。
要するに、がん細胞は特殊な好みがある。
有酸素運動ってありますよね。それは、酸素を使って細胞のエネルギーにしてエンジンを回しているというか、そういう使い方が細胞にはあります。
もう一つ短距離走ったりとか、重い物をぐっと持ち上げたりすると疲れて痛くなったりするじゃありませんか。
これは、酸素を使わない運動なんですよ。
その代わりに糖を使っています。ブドウ糖を使っているんですよ。
身体の細胞はダブルエンジンになっていて、ブドウ糖を使うエンジンと酸素を使うエンジンと両方あるんです。
何故かがん細胞はブドウ糖を使うエンジンだけを使って、酸素を使うエンジンを使わないんですよ。
なので、がん細胞の周りは低酸素でエネルギーを出してい
ないから、低体温という環境ですくすく育っていると。
では、がん細胞に糖を与えない、温めると好きな環境ではなくなる。
近藤正樹氏(以下、近藤):そうか、温めると低体温がしっかりと上がってくれるから。
中村:がんに嫌がらせをしてあげれば、ある意味で兵糧攻めみたいになるわけです。それでも、がん細胞は攻め込むことができますよねという学問の領域があって、これを代謝と言いますけど、代謝でがん細胞のことを考えている人もいるわけです。
代謝も今の話からしてみると兵糧攻めすれば良いじゃないかという戦略になりますよね。
近藤:はい、なりますね。
中村:ということは、後戻りできるということなんですよ。今の環境を変えてあげれば、がん細胞は居心地が悪くなって大きくなれないですよと。上手くいけば自然消滅しますよという理論があるわけなんですよ。
この理論に基づいて研究した人が2019年にノーベル賞を取りました。そのくらい連続して免疫、代謝とがんに対するノーベル賞が出てくるわけだから、がんという病気をどう捉えるかというのは、まず遺伝もあるでしょうと、免疫もあるでしょうと、代謝もあるでしょうと。
※遺伝説は、がん細胞はその遺伝子が狂った細胞である。一度、狂ってしまう
と元に戻らない、老化と同じと説明します。元に戻らないものは取り除くこと
が唯一最良の治療と考えます。
中村:この3つの土俵で考えても、科学の世界でもそこまで言っている訳なんです。残念ながら病院の先生方は免疫とか代謝とかということに対して薬の世界ではないし、医学部では習ってこない。
あと、保険診療の点数が付かない、診療報酬の中の治療項目に入ってないから、それが良いのかどうだか分かりません。
保険点数になっているものはエビデンスがあるし、権威が認めている、政府が認めているものだから、これは治療法として正しいものですよと。
がん治療の現実
中村:日本には、混合診療禁止というのがあるんですよ。
保険医療制度の中で保険メニューというか、それを使うということで保険診療が行われているわけなんですよ。このメリットは東京で治療を受けようが、離島で受けようが、山の中で受けようが全部平等。
近藤:金額もね
中村:金額も中身もという平等で公平な制度なんですけど、逆に例えばお金持ちの人が「あれもやりたい」「これもやりたい」ということは禁止しているわけ。がんはステージがあるじゃないですか、進行していたりとか。初期だったら取ってしまえば良いだとか、治療成績がすごく良いですよね。だけど、進行してしまうと標準治療というか今の遺伝子を狙う治療法というのはターゲット
があって、それを叩くと狙いきれない、進行しているということは全身に散らばっているわけだから。そこら辺を全部、隅々まで叩くということはどこに潜んでるか分からないと叩けないですよね。
近藤:叩けないですね。
中村:そのときに、標準治療はお手上げなんですよ。叩くことはお手上げなんだから、そこの残党は免疫チームに頑張ってもらおうとか。
近藤:そうですよね。
中村:あとは代謝で、今まで生きてきた環境を変えましょうかということです。この環境だとまた残党達が生き残るから、残党達が生き残らないように体温を上げましょうとか、食べ方を変えましょうとか、そういう風にすれば残党がまた復活しないかもしれない。
近藤:そうですよ。トータル的に攻めていけば良いわけですよね。
中村:それを病院でやろうとしても、まずメニューがない。
近藤:メニューに入れられないんですか?
中村:ガイドラインを作ってくれれば良いけども、そのガイドラインがない。
近藤:そのガイドラインは誰が作ってくれるんですか?
中村:ガイドラインを作るためにはエビデンス(証拠)が必要なんです。
近藤:ノーベル賞を取っていますよね。十分なエビデンスではないんですか?
中村:研究と臨床は別なんですよ。
近藤:研究をやって、臨床検査をやらなければいけないというわけですね。
近藤:安全性だとか、効果だとか、それにお金を付けて良いだとか、そういうことを病院でやりましたと、こういう風にこの人にやったらこういう結果がでましたという、ではこれを診療報酬の治療メニューとして認めますよとするためにはエビデンスをださなければだめですよ。
がんの治療費
近藤:高額療養費制度が効かない治療を受けたい人は、どのくらいのお金を用意しておいたら良いのかというのを是非、教えて欲しいなと。
中村:結論から言うと、3ヶ月で500万円。3ヶ月で500万円を使い切る蓄えがあれば余裕です。貯金と保険の掛け金とのバランスで、例えば3ヶ月間で500万円使うだろうなとしたときに、貯金は200万円くらいあるから、300万円くらいを保険で出してくれたら、だいぶ楽だよね。
近藤:そうか。そういう考え方で良いんですね。
中村:そういう風に掛け金とのバランスを取りながら、どういう風に一時金が出るかとかね。毎月出るようなパターンだったら、どのくらいの掛け金にしとけば良いのかという計算をしておいてもらったら良いんじゃないかなって。
近藤:なるほど。
治療費の捻出法
近藤:本当に先生がおっしゃるのと一緒でお金も、これが全てってないんですね。お金の資産づくりも出費をコストカットするというのも一つじゃないですか。
だけどコストカットするといっても、日々の生活の楽しみの部分も、おこづかいも減らして、その趣味もやめなさいみたいなファイナンシャルプランナーもけっこういるんですけども、それだと長続きしないですし、何のために生きているか分からないというところもあるんで、無駄なコストの削減というのはしても良いと思うんですけども、楽しみの分までは削ってはいけないのではと思うんですね。
例えば、無駄なというのは先ほど先生がおっしゃったような保険。
健康保険というような保障内容があるのに、全然みんな知らないんですよ。会社の健康保険組合の内容を知りません、だけど民間の保険会社にたくさんの保険に入っているとかという人がかなりいるんですね。
これってふたを開けてみると健康保険の自己負担が10万円どころか会社によっては、2万円~3万円で済みますよという、こういう保険組合もかなりたくさんあるのに、それ以上に保険料をたくさん払って、1日入院したら1万円とかっていうのを何社も入っているとかいうような方々はけっこういらっしゃるので、ひとつコストカットという点では保険料のコストカットをすることで、その浮いたお金を500万円の資産をつくる貯金に回すとかっていうのはひとつだと思いますし、楽しいことを生活するためには、お給料もずっと生きている限りもらえるわけではないし、MAXいくら以上なんていうのは自分ではコントロールできることではないから、やっぱり日々のひと月の生活の中でこれだけは元気で生きていくとしてもちょっとストックしておこうかなという、そういう風なものをしっかりとストックしながら、それが500万円貯まるまで時間がかかると思うので、それは人それぞれのペースだと思うんですよね。
年間200万円貯金できますという人は2年ちょっとでできると思いますけど、年間50万円しかできないという人は10年かかるわけじゃないですか。それはもう人それぞれだと思うんですけど、その準備ができるまでの間に(がんに)なってしまったらということを考えた場合には、それこそ保険の出番になるのかなと思いますよね。
投資と投機の違い
近藤:それこそ皆さん勘違いされてしまうのが資産運用、例えば株式にお金を預けると、すぐにちょっと上手くいけば1年後2年後とかに2倍3倍に増えましたみたいなことを思ってしまう方がけっこう多いんですよ。
でもこれって資産運用の「投資」と「投機」という2つがある中の少しマネーギャンブルに近い投機といったジャンルになるわけですね。
例えばあそこの会社の株価が今は安いけど、介護業界は今後伸びていくから、業績が上がれば株価が上がるわけですから、そこで売って利益を取ろうとか、為替であれば1ドルを103円で買っておいて120円になったら売ろうとか、こういう値段を当てることを投機というんですけど、こっちをやろうとしてしまう方が多いんです。
そうではなくて少しずつコツコツと貯金の延長線上でお金にも働いてもらって、今日本はマイナス金利と言われていますので、もう少し働いてもらうということを考えると10年必要なんですよ。
少なくとも。そうするとこの10年間っていうのって、ある程度時間が必要なので、ここはもうギャンブルでは準備してはいけないものだと思うので、その間の10年を待てるのであれば、お金を働かせるというのをやられてみれば良いと思いますよね。
最後に
近藤:中村先生、今日は色々と長い時間、どうもありがとうございました。
中村:こちらも、近藤さんから生のお金の話を聞けて、大変良かったです。
近藤:世の中がんのことに対しては2人に1人という報道もあるくらいなので皆さん心配されている分、漠然とした不安というような方も多い中で、今日の先生の話を伺えて明確にこうしておけば安心に変わるのではないかというようなものが、すごく得られてとても有意義な時間を過ごさせていただきました。
中村:とにかく、がんとはどういう病気かということを自分がどう考えているか、周りの人もどう考えているかという質問から考えてみるのが良いと思いますね。
近藤:なるほど。
中村:実は、色々な考え方があるんだよということです。ひとつだけではないです。
近藤:分かりました。自分の中にがんを倒すものは備えているということも今日は聞けたので、日々の生活の改善というところも含めて(がんに)なってからではなく、なる前にしっかり準備できたら良いのではないかと思っています。
先生、今日はありがとうございました。
中村:ありがとうございました。