「円安」「円高」という言葉が最近ではよく聞かれるようになっています。「円安」「円高」の概念が分かるようになると、経済ニュースの理解が進み、より興味を持ちつつ経済ニュースの内容を自分の生活に役立てることができるようになります。ここでは「円安」「円高」の概念を分かりやすく説明していきます。
<円安って何?>
円安とは、USドルを基準にした時に日本円の価値が下がっている状態を指します。
例えば経済ニュースで6/1に「1ドル130円」と言っていたとして、6/2には「1ドル135円」になっていたとします。そうすると、6/1には130円で1ドルと交換できていたものが、6/2には135円と、5円多く支払わなければ1ドルと交換ができない状態になっています。つまり、6/2の方が6/1よりも日本円の価値が下がっていると言えます。この状態を「円安」と言います。
2022年1月が約1ドル115円、6月中旬で135円をオーバーしているため、半年で20円前後の急激な円安が進んでいて、ニュースではこれが問題視されている声が多くなっています。1ドル135円の円安というのは、約20年ぶりであり、これだけの円安の状況が続くというのは日本経済の危機ではないかとも言われています。
実際に円安とは日本円の価値が下がることであり、これだけ日本円の価値が急激に下がっている状況というのは、国際競争力が下がっていることを示しているという声もあり、楽観視できないという見方が一般的になっています。
<円高って何?>
円高とは、USドルを基準にした時に日本円の価値が上がっている状態を指します。
例えば経済ニュースで6/1に「1ドル130円」と言っていたとして、6/2には「1ドル125円」になっていたとします。そうすると、6/1には130円で1ドルと交換できていたものが、6/2には125円と、5円少ない支払いで1ドルと交換できる状態になっています。つまり、6/2の方が6/1よりも日本円の価値が上がっていると言えます。この状態を「円高」と言います。
2011年には1ドル75円台を記録したことがあり、これが現状の最高値とされています。2022年6月現在で円安が急激に進んでおり135円を超えていますが、このまま150円台に突入することがあれば、日本円は2011年の水準とくらべて二分の一に価値が下がっているとも言えます。円高が進み過ぎるのも日本製品の輸入が敬遠されるおそれがある等の問題を孕むものの、現状では円安よりも円高が望まれている状況になります。
<円安になるとどうなる?>
円安になると、円の価値が下がり、USドルの価値が上がります。そのような状況では海外から見ると、日本製品が安く買える状態になるので、日本側の輸出が盛んになります。
海外での輸出がメインになっている製造業や、その製品を扱っている販売業は盛んになりますので、売上が上がる会社が増えます。
また、USドルよりも日本円の価値が下がるので、日本への観光が増えることにもなり、インバウンド業界に外国人客が流れ込むことにもなります。
良い円安は、日本の産業を盛り上げてくれるカンフル剤になり得るのです。
しかし一方で、悪い円安の場合はメリットよりもデメリットの方が大きくなります。
円安が進むと、例えば1ドル130円の時に100ドル(13,000円)で買えていたものが、1ドル135円になると同じものを手に入れるのに13,500円支払う必要が出てくるので、500円多く支払うことになります。そうなってくると、当然物の原価が上がりますので、日本国内での物の売値が上がっていきます。このような仕組みで、円安が悪い方向に進むと日本国内ではインフレーション(物価上昇)が進むこととなります。また、外国製品が値上がりしますので、外国製品の輸入控えが起こるリスクも出てきます。
現状は新型コロナの影響でインバウンドの受け入れが制限されている状況になりますので、円安の恩恵が半減されている状況と言えます。逆に小麦や原油等の値上げが顕著であり、物価上昇の影響の方が大きくなっている状況です。実際にスーパーに行くと、値上がりしたものが多くなっていると実感します。これは円安に限らず、ロシア・ウクライナ情勢の影響も大きいと言えますが、2022年6月現在では円安の悪い影響が日本経済に蔓延っている状況と言えるでしょう。
<円高になるとどうなる?>
円高になると、円の価値が上がり、USドルの価値が下がります。そのような状況では海外の製品が安く手に入るようになりますので、外国製品の輸入が盛んになります。日本では外国製品の消費や購入が多くなります。
また、USドルよりも日本円の価値が上がるので、安い値段で海外旅行が組めて、また現地でも日本円の価値が上がっている分、安くお土産を買ったり食事をしたりできますので、日本から海外旅行に行く人が増えていきます。
良い円高は、日本国内の購買意欲を促進し、経済を円滑に回すカンフル剤になり得ます。
しかし一方で、外国から見れば日本製品が値上がりすることになりますので、海外からの輸入が控えられる形になり、輸出に力を入れている企業は売上が下がるような状況になることもあります。
また、国内製品よりも安い海外製品の方が好んで買われるような状況になると値下げ合戦が起き、度が過ぎた円高になるとデフレーション(物価下落)が起き、国内企業の経営に悪影響を及ぼすことにもなります。
<円高、円安はどちらの方がいいの?>
円高、円安ともUSドルと比較した為替相場の値上げ、値下げに関する現象を示す言葉になります。前述のとおり、円高にも円安にもメリットとデメリット、それぞれが存在するので一概にどちらがいいかを議論するのは難しいと言えるでしょう。しかしながら、急激な円安や円高、また過度な円安や円高は経済に悪影響を及ぼしやすいので、円安・円高とも緩やかな推移が求められる場合が多くなっています。
2022年上期の円安については、決して良い円安とは言えません。特に日本は食料自給率が低く、食料は輸入に頼るところ大きくなっていますので、食料品の値上げは生活に大きな影を落とします。また、自動車等の輸出においても、出荷数は伸びるかもしれませんが、円安により日本製品を外国から安く買い叩かれている状況であるとも言えます。このように、2022年上期を見れば、急激で過度な円安が多くの国民を苦しめているのです。
<円安や円高といった、国際経済情勢を意識しよう>
ここで紹介したように、円安や円高は分からなければ難しい概念であるかもしれませんが、私たちの生活に密着したものになります。円安や円高を気にしながら生活をすることで、例えば「これからものの値段が上がりそうだから、備蓄品は今のうちに購入しておこうかな…」だったり「円高で今が海外旅行のチャンスだから、あらかじめ有給をとっておこう」など、今後のプランが立てやすくなります。もちろん、そういった情報はニュースのコメンテーター等の話を聞く方法もあるかもしれませんが、物価上昇や株式投資の機会を考えたり、あるいは海外旅行や転職といった、ライフイベントを考える時に、円安や円高といった為替相場を分析できれば、自分にとって良い方向に向かうことも多くなるでしょう。
ここで紹介した内容と、テレビやネットのニュースで流れている情報をうまく組み合わせながら、円安や円高といった経済情勢に興味を持ちつつ、生活を豊かにする手がかりを得ることができればいいですね!